学んだことをすぐ使えるようにするには

論理思考のようなツールの場合、いろいろ汎用的に使える分、逆に活用の場所を見つけるのが難しかったりします。その結果、それこそ考える力がある人とそうでない人で、活用度合いが大きく違ってしまいます。

これは論理思考に限った話ではなく、いろいろな可能性を持ったものについては広くあてはまることです。初期の頃のパソコンやインターネットにもそういうことがありました(今も?)。

そこで、学ぶ時や振り返りの時にちょっと工夫をすることで、考える力を高めつつ、学んだことの活用度を上げることができます。それは次の3つのことを整理しながら学んで行くことです。

1.これはどんな時に使えるか?
2.それでどんなプラスが生まれるのか?
3.具体的な使い方(手順&コツ)は?

例えば、メカニズム思考でよく使う「やれる・やりたい・やらざるをえない」というのがあります。この3つがそろった時に人はそのことをやる可能性がかなり高くなる、つまり「人が動くメカニズム」というわけです。なお授業でよくやるのは「ダイエット」を例に考えながら最終的に「人が何かをやる/続けるメカニズムを考えてみよう」とワークをしてもらい、自ら考えてもらった後で、これを見せるというやり方です。

そうやってこのメカニズムを知ったとして、より使えるようにするために、上の3つを考えるわけです。

1.これはどんな時に使えるのか?
薬がどんな症状に効くのか、というのと似ていますね。具体的に考えると、ダイエットはもちろん、早起き、ジョギング、読書、掃除片付け等々いろいろ使えそうですが、「要はどういう時?」と出しておいた方が、応用が効きます。すると共通するのは「やろうと思っていてもやれない、続けられないことをやれるようにしたい時」でしょう。

2.それでどんなプラスが生まれるのか?
まずは、精神論でいくらがんばってもやれなかったことが、あまり無理をせずにやれるようになる、というのがあります。これは自己嫌悪に陥るのを防いだり自尊心を回復する効果もあります笑。また、無駄な努力をせずに済むという効用もあります。とりわけ他人に何かをやらせようという時、この効用は大きいです。例えば子ども相手にただ「さっさとやりなさい!」と言っていてもなかなかやらないので、言っている方が疲れてしまいますが、「やれる」「やりたい」を高めることでそういう徒労感を感じることが減ります。
ところで、この「どんなプラスが?」ということを知っているメリットはなんでしょうか? それは二つあります。一つは「がんばって使いこなそう」と思えること。もう一つは間違ったやり方をしている時に気がつきやすくなります。ちゃんとやっているつもりでもこのメリットが得られていなければやり方を間違っていると分かるということです。

3.具体的な使い方(手順&コツ)は?
では、具体的にどうやるのか? 詳しい手順はここでは省きますが、やっていることの意味を理解していないとうまく行きません。そこで、自分なりのコツを出しておくことが、理解を深めるためにも、実際にうまくやるためにも効いてきます。例えば僕の場合、「やりたい」の中の「楽しくする」ことがポイントなので、自分がどうなると楽しくなるのかを日頃から探っています。そしてそういう要素を組み込んで行きます。例えば僕の英語力キープのためのメイン手段は、英語の推理小説の朗読を聞くことです。考える、スリルがある、ヒューマンドラマもある、そして聞いた方が本を読むより臨場感があって楽しい、といったことで、楽しく続いています。

そんな感じで、一つのことを学んだ時に、
1.これはどんな時に使えるか?
2.それでどんなプラスが生まれるのか?
3.具体的な使い方(手順&コツ)は?
をつかむ(つかみきれなければ質問しに行く)ようにすると、学んだことを活用できる度合いが上がります。

神は細部に宿る

「神は細部に宿る」という言葉はよく「細部まで手を抜かない」という意味で使われます。これはこれで「そうだよなあ」と思いますがもう一つ「神は細部に宿る」と思うことがあります。それは柱となる考え方を「細部に埋め込んでこそ、目指していることが実現する」ということです。

今週のBL1(論理思考とリーダーシップ)もそんなことを意識しながら授業を設計しました。「柱になる考え方」は、
・学生達が考えまくるようにする(考えるクラスなので)
・論理思考の効用を実感できるようにする
ことです。

例えば授業の最初の方にはこんなスライドが表示されました。

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このスライドは一見、成績評価について説明しているだけに見えますが、実はもう一つやっていることがあります。一石二鳥を狙っているわけです。一鳥は成績評価方法を改めて説明することで受講生のやる気を高めることです。「甘くない!」ということで「もっとまじめにやらないとやばいかも!}と思わせる面もあれば「クラスメートの学びに貢献してこそ成績優秀者になれる」ということで積極的に他の学生をサポートするようになるというように。

もう一鳥は、BL1で論理思考の主要素としている「メカニズム思考」や「目的を押さえた意思決定」が、成績評価という身近なところで実際に行われていると感じてもらうことです。論理思考を教えることの難しさは「自分には関係ない難しいもの」と思われがちなことです。しかしそれでは学習意欲も上がらないので、「身近なものなんだ」「自分にも十分理解できるし使える」と感じてもらうことを重視しています。

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上のスライドでは、単にグループワークのやり方を説明するだけでなく「なぜそうしているのか?」を受講生たちに考えさせています。こうすることで、
・なんとなくワークをやってしまうことを避ける
・常に目的を意識して物事に取り組む癖を付ける
・目的に合わせて細かい手をいろいろ打てることを実感させる
ことを狙っています。
なお、メインとサブという役割を作ってローテーションするようにした理由は、何も言わないとメインの学生はいつもメイン、サブの学生はいつもサブになってしまいがちだからです。どの学生にも「まず自分が口火を切り、一通り意見を言う」「人が言ったことを受けて話す」ことをやって欲しいと考えました。

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上のスライドは、また別のパターンで考えさせようとしています。通常だと「こういうことをフィードバックして」とスライドにあるのですが、ここでは「何をチェックするべきか自分たちで考えて」とあります。こうしているのには、二つの意図があります。一つは「行動目標というのはどうなっているべきか?」を自分たちで考えさせることです。ここで考えると同時に考えながらフィードバックをすることがその狙いで、つまりはとにかく考えさせるということですね。
もう一つは、考えることで「ここにもメカニズムがあった!」と気づいてもらうことです。例えば行動目標というのは成果目標を実現するように作られているとか、同時に必要な能力を強化するように作るべきだといったことです。これをレクチャーで話すことは簡単ですが、それでこちらは伝えた気になっていても、学生は右から左に聞き流している、となりがちです。またちゃんと聞いていてもすぐ忘れます。それを自分たちで見つけることで、多少時間がかかっても「メカニズム思考とはこういうことなんだ」というのが彼らの中にしっかり形づくられていくことを狙っています。

最後に紹介するものは「考えさせる」というより今期のテーマである「たくましくする」ためのものです。

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これは今回の課題の提出方法で、zipファイルにするように、としています。しかしzipファイルの作り方は書いていません。自分で調べるか、分からなかったら人に聞こうと授業で話しています。その狙いは受講生にたくましくなってもらうこと。ITを使いこなすこともそうですし、全て用意されていなくとも自分で調べたり人に聞いてしまうたくましさを身につけよう、ということです。

ここに紹介したのはごく一部で90分の授業、40枚のスライドの中に、たくさんの考える機会と論理思考を実感する機会を仕込みます。それは、この授業を活きたものにする、神を細部に宿らせることだ、と思っています。

場のエネルギーを高めるような目標設定(個人)

秋学期の授業も4週目に入って、今は目標設定にみんな取り組んでいます。

ここで良い目標設定ができると、絶大な効果があります。

できれば避けたい難題が、まるで新しいゲームのように見えたり。延々と続く単調なトレーニングが、理想のボディ実現への階段に見えたり。そうなると学生の学ぶ姿勢も前向き、主体的になってきます。
というように、良い目標を設定できれば、三分の一は終わったようなものです。(あとの三分の二は、作戦を立てることと、実行です)

ところがここで問題は、まだそういった良い目標で成功した経験の少ない人の場合、うまく目標が立てられないということです。
別に努力をしなくともやれそうなことを目標にしてみたり、逆にただ「できたらいいなあ」と無理な目標にしてみたり、「とりあえず片付けなきゃ」と、ありがちだが本人らしさのかけらもない目標を立ててみたり。

そういう状況から、良い目標が立つようにして行くためには、いろいろなコツとともに、どうしても「気持ち」が必要になります。「いい目標を立てるぞ!」という気持ちです。その気持ちを高めるためにやったことの中から、今回は二つ紹介してみます。

一つはSAや教員が自らの経験から、目標設定の意義を語ること。
自分は○○時代にこういうことをやっていた。
目標のない時は、〜〜〜だった。
それがこういう目標を立てたら、意識がこう変わってきた。
そしてこんな結果が出て、こんなふうに力も伸びた。
こんなふうにみんなと喜んだ。
というように。例えばうちのクラスのSAは次のように話してくれました。

自分は高校時代にバスケをやっていた(高校から)。
目標を立てる前は、自分がうまくなることだけを考えていた。弱小チームだったし。
でも、最後の大会を前にして「とにかく1回戦勝とう」という目標を立てた。そして自分が何をできるか考えたら、高校から始めたやつらの気持ちやどこでつまづくかが分かることだと思った。そこで、その指導に力を入れた。
そうしたら1回戦、勝てた。チームの雰囲気もすごく良くなってきた。その後、負けてしまったけれども、みんなですごく喜んだ。

もう一つは、同じ科目を教えている宇田武文先生が、前職の企業でやっていたと教わった話です。それを参考に、次のようなメッセージをクラスのSNSに上げました。

【目標設定は、達成して「お祝い」をするためにあるんだよ】

「目標は、達成したら嬉しくてお祝いしたくなるものにしよう。友達とご飯に行くとか、自分にプレゼントするとか。

目標がないとお祝いもないし、今のままでもできる目標は、達成してもお祝いしたくなるほど嬉しくないよね。
そして、目標を定量化・具体化すると、達成できたらはっきりわかるし、何に向かって頑張ればよいのかもわかる。

「良い目標」を設定できると、大学生活に「お祝い」したくなるエキサイティングな時間が増えるよ。そうなるような目標を設定しよう! そして達成して、みんなでお祝いしよう!

人は一見「メリット」の方が動きそうですし、実際にそうかもしれません。しかしこういう「楽しげ」な感じに持っていくと、単にみんなが挑戦し出すだけでなく、場の雰囲気が明るくなってきます。

そんなことをやった結果、だいぶ、過去のクラスにおけるよりも熱のこもった、その人らしい目標が出て来ました。

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写真は、今日、授業外で開いた相談会の様子。参加は自由なのですが、入れ替わり立ち替わりけっこう学生がやってきました。(写真には女子が多いですが、男子も来ていました)

学びを定着させる振り返りに必要な二つのこと

僕の担当している授業は秋学期の第三週が終わりました。今週のクラスのいずれでも意識していたのは、良い「振り返り」の仕方を伝えることです。「研修や授業、試験が終わったら忘れてしまう」のではない学びには、良い振り返りが不可欠です。

もっとも、それをやったのは授業中ではなく授業後で、クラス用のFacebookグループの中でした。教室内で伝えられることは限られているし、少しずつでも毎日意識していた方が論理思考にしてもリーダーシップについても身につくので、SNSは強力なツールです。

で、良い振り返りの第一のポイント、それは学んだことを「実際どう使うのか?」と考えることです。例えば「実践で学ぶ論理思考」(BL3C)のクラスでは今週、ディスカッションの仕方を学びました。すると「次はどうディスカッションの仕方を変えるのか」(授業に限らずあらゆる機会で)を整理しておくのが、最良の振り返りです。

しかしここで「真の学び方」をできる人とそうでない人の差が大きく出ます。できる人は「具体的に何をするのか」のイメージを頭の中に定着させようとします。そうでない人は授業の中で出て来た「言葉」だけを「今日はこれを学びました」と上げます。「ゴールを共有することの難しさと重要性を学びました」とか。言葉だけ、それもばくっとしたことだけ覚えても、実際には使えません。

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具体的にそれをどうやってやるのか、最低限「普通はこうするけど、そこでこれを意識する」といった具体的な指針に落とし込むことが必要です。例えば「全員がそれぞれの考えを順番に言いがちですが、それだと時間の無駄なので、各自A4の紙1枚に大きく整理して出し合い、共通点と相違点を見つけて、なぜ違うのかを話し合います」とか。

でも、十分なイメージが持てていないと分かった時、二つ目のポイントの出番です。それは「ここが分からない」と質問することです。例えば「論理思考とリーダーシップ」(1年生必修クラス)のある受講生はその点でとても良い例を示してくれました。

「中学生に分かる言葉で表現しよう」と授業の中で出て来たことについて「どのように咀嚼すればその分かりやすく伝わる言葉をうまく見つけられるかが気になります。…これって鍛錬あるのみ?」と聞いてきました。そして僕の答えに対してさらに自分なりにそれを咀嚼し、自分の言葉にして「これで行けますか?」と聞いてきました。こういう人は伸びます。

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これが出来るためには、最初のポイントである「実際どう使うのか?」を考えながら授業を受けていることがすごく効きます。