音楽座ミュージカル研修見学 – 研修という舞台を観た

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僕は出不精なのだけど、ありがたいことに誘い出してくれる人がいて、そんな中から、とてもいい出会いが起きることがあります。今回は同僚の舘野 泰一さんが「音楽座ミュージカル」の石川 聖子さん、藤田 将範さんに引き合わせてくれて、研修を見学させてもらいました。

行く前は、ミュージカル集団が行う研修っていったいどうなるんだろう?と全く想像つかなかったのですが、周りにはけっこう知っている人がいて、しかも「すごい」と聞いていました。なので興味津々でつくばまで出かけました(横須賀からは遠かった!)。

で、実際に見て。とても得るものが大きかったです。たった4時間のうちに、自分が一回り成長するヒントをもらった気がします。

まず、行われていたのは、150名の先生方(小中高)を対象にしたコミュニケーションの研修…なんですが、僕が観たのは(そして半分くらい参加したのは)、少し大袈裟に言うと受講者を巻き込んだミュージカルでした。「少し大袈裟」というのは、ずっと歌ったり踊ったりしているわけではないということ。でも、魅せられる演技はずっと行われていましたし、頻繁に受講者もそれに巻き込まれていました。

研修の中のアクティビティ、例えば「地域に開いた学校づくりのためのミーティング演習」だと、まず役者さんたちによって「失敗例」がリアルに演じられます。リアルなんですが微妙にコミカルなところが、ありがちな重たさを消しています。そして失敗例を成功例に変えるコツが提示された後で受講者達が「成功例」を作るべく挑戦して行きます。その後ろには緻密なシナリオがありました。

「これは彼らならではで、他には真似できないな」と思ったのは、役者さんたちの力で空気を作って行く部分。なにしろプロの役者さんたちが目の前で演じ、時に歌い、踊って行くので、とにかく引き込まれます。これはとりわけ「重たく」なってしまっている組織や、「閉じて」しまっている人たちには有効だと思います。しかもそれは鮮明なイメージとなって残るので、研修が終わってからも少なくともしばらくは活きていると思います。でもそれは洗脳とかではなく、ストレッチとか開放の感覚でした。個人のよろいをはずして、こりをほぐして、とりわけ人と関わる力を呼び覚ましている感じです。

一方、僕らがやろうとしていることと似ているな、と思ったこともありました。それは、シナリオとか設定づくり。例えば僕らの場合「リーダーシップとは」「論理思考とは」というコンテンツだけでなく、受講生たちが本気で動き出したり考えたりする空気をつくるための仕掛けをかなり作り込みます。割合的にはコンテンツと半々か、時にはそちらの方が大きくなります。かつその空気が研修/授業中だけでなく普段の生活まで保たれるようにしようとします。

音楽座の場合、それが前述の演技と組み合わさって、まさにミュージカルが作られていると感じたわけです。僕らの場合は演技はできないので笑、コンテンツの理解、設計力、言葉の力、そして大学ではSAたちという特殊な位置づけの協力者達の力で総合力を高めています。

最後にもう一つうれしかったのは、「生き様」という言葉が出て来たこと。音楽座の役者達は技術だけでなく生き様を問われると言います。僕らも自分たち自身がリーダーシップを発揮しているか、社会を前に動かすことに挑戦しているかを問われています。研修のフィナーレで、自分たちも歌いながら、役者さんたちがこちらの目をがっちり捉えながら歌う様子を見ていて、「がちでやっている人たちがここにもいる」と、うれしくなりました。いつか彼らと何か「共演」できるといいなあと勝手な妄想^^。

あと、もう一つ。「本当に大切なものは目には見えない」というのは彼らがミュージカルにしている「星の王子様」の中の有名なセリフ。これはその通りだと思いますが、その目に見えないものを見えるようにしよう、少なくとも感じられるようにしよう、としている、音楽座についても自分たちについてもそのように思います。

桐蔭学園アクティブラーニング公開研究会2016(その1)

ばたばたしていて、ちょっと間が空きました。

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先日行ってきた、桐蔭学園でのアクティブラーニング公開研究会2016について書きたいと思います。なかなか収穫の多いイベントでした。

まずは公開授業。2つの授業を見学しましたが、そのうちの1つ(中一国語)は特に興味深いものでした。テーマは「メディアの表現を分析し考察する」となっていましたが、実際には自分たちで「広告」を作るという実践まで含まれていました。

授業が始まるとまず写真のようなスライドを見せて、学園祭の模擬店広告として何が問題かをグループで考えさせていました。

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各グループは非常に短い時間の中で
・何が問題なのか
・どう変えれば良いのか
を考え、まとめて行きます。ディスカッションはとても活発です。

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まずこれは、題材がとても良いと思います。生徒達にはとても身近なテーマで、かつ、突っ込みどころ満載。しかし「人に動いてもらうにはどんな情報が必要か?」を自分たちで考えることがちゃんとできます。

時間になると数グループがプレゼン。慣れているからか堂々としています。ただ読み上げているだけでなく説明もできていて、中一とは思えないレベル。

そして確かにこういった要素が必要だよね、と先生がまとめたあと、宿題が出ました。これを実際のポスターに仕上げて来るようにというもの。「写真が欲しい」と書いていたわけだから実際に入れるとか、必要な情報を分かりやすく表示するとか、具体的にやってくるわけです。なお生徒達は全員がiPadを持っていて、グループで作ったものも写真もさっそくそれで撮っています。宿題の提出もデジタル。

この、何を授業内でやり、何を宿題にするかというのもとても良い組みあわせになっていたと思います。もしこのグループワークなしにいきなり宿題だったら、クラス内のレベル差が大きく出たのではないかと思います。でも「何を入れるべきか」までは出ているので、あとは具体的に考えるだけ。かつ楽しい^^。しかし作る中でやはりいろいろ考えることになるでしょう。どの情報をどこにどんな大きさで入れると良いか、とか。

この後、授業は、ある企業のCMについてまたグループで分析をしていました。一見、コミカルに企業名とキーメッセージを連呼しているだけに見えるCMなのですが、生徒達は適切な分析をしています。これには、先ほどのワークと、先生の質問が、ちょうどよい踏み台になっているようです。

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…というように授業が展開されて行きました。とても良いと思ったのは、「考える」「自分から動く」「人と関わる」という要素がぎっしり入っていたことでした。たとえば全員がしっかり考えられるように、まず各人で考えたことをシートに書き出してから、グループワークが行われていました。グループワークは役割を自分たちで決めて運営されていますし、発表もプレゼンに慣れて行くにはちょうどよいくらいの量です。

そして、それを支えているのが「興味を持て、かつ実践可能な題材」でしょう。BL1の教材もそういうものを基本使っています。そうなっていた方が断然真剣になれます。つまり、
・興味を持て、かつ実践可能な題材
・的確に設定された各ステップ
・考える、関わる、自分から動くための仕組み
がやはり重要だなと改めて思いました。これらにより、考える力をはじめとする基盤的能力がどんどん高まりそうです。

では、国語の学習としてはどうかというと、上記のようにアクティブに学ぶ結果、日本語についての感度は上がって行きそうです。また日本語を論理的に使いこなすという意味でも、レベルアップするでしょう。一方、この内容そのものでは、難しい表現を覚えたりはしないかもしれません。しかし表現することや見ることに関心さえあれば、教室の外の日常で学んで行くことができます。そのための力をつけることが教室の役割だとすると、これで良いのだと思います。

学んだことをすぐ使えるようにするには

論理思考のようなツールの場合、いろいろ汎用的に使える分、逆に活用の場所を見つけるのが難しかったりします。その結果、それこそ考える力がある人とそうでない人で、活用度合いが大きく違ってしまいます。

これは論理思考に限った話ではなく、いろいろな可能性を持ったものについては広くあてはまることです。初期の頃のパソコンやインターネットにもそういうことがありました(今も?)。

そこで、学ぶ時や振り返りの時にちょっと工夫をすることで、考える力を高めつつ、学んだことの活用度を上げることができます。それは次の3つのことを整理しながら学んで行くことです。

1.これはどんな時に使えるか?
2.それでどんなプラスが生まれるのか?
3.具体的な使い方(手順&コツ)は?

例えば、メカニズム思考でよく使う「やれる・やりたい・やらざるをえない」というのがあります。この3つがそろった時に人はそのことをやる可能性がかなり高くなる、つまり「人が動くメカニズム」というわけです。なお授業でよくやるのは「ダイエット」を例に考えながら最終的に「人が何かをやる/続けるメカニズムを考えてみよう」とワークをしてもらい、自ら考えてもらった後で、これを見せるというやり方です。

そうやってこのメカニズムを知ったとして、より使えるようにするために、上の3つを考えるわけです。

1.これはどんな時に使えるのか?
薬がどんな症状に効くのか、というのと似ていますね。具体的に考えると、ダイエットはもちろん、早起き、ジョギング、読書、掃除片付け等々いろいろ使えそうですが、「要はどういう時?」と出しておいた方が、応用が効きます。すると共通するのは「やろうと思っていてもやれない、続けられないことをやれるようにしたい時」でしょう。

2.それでどんなプラスが生まれるのか?
まずは、精神論でいくらがんばってもやれなかったことが、あまり無理をせずにやれるようになる、というのがあります。これは自己嫌悪に陥るのを防いだり自尊心を回復する効果もあります笑。また、無駄な努力をせずに済むという効用もあります。とりわけ他人に何かをやらせようという時、この効用は大きいです。例えば子ども相手にただ「さっさとやりなさい!」と言っていてもなかなかやらないので、言っている方が疲れてしまいますが、「やれる」「やりたい」を高めることでそういう徒労感を感じることが減ります。
ところで、この「どんなプラスが?」ということを知っているメリットはなんでしょうか? それは二つあります。一つは「がんばって使いこなそう」と思えること。もう一つは間違ったやり方をしている時に気がつきやすくなります。ちゃんとやっているつもりでもこのメリットが得られていなければやり方を間違っていると分かるということです。

3.具体的な使い方(手順&コツ)は?
では、具体的にどうやるのか? 詳しい手順はここでは省きますが、やっていることの意味を理解していないとうまく行きません。そこで、自分なりのコツを出しておくことが、理解を深めるためにも、実際にうまくやるためにも効いてきます。例えば僕の場合、「やりたい」の中の「楽しくする」ことがポイントなので、自分がどうなると楽しくなるのかを日頃から探っています。そしてそういう要素を組み込んで行きます。例えば僕の英語力キープのためのメイン手段は、英語の推理小説の朗読を聞くことです。考える、スリルがある、ヒューマンドラマもある、そして聞いた方が本を読むより臨場感があって楽しい、といったことで、楽しく続いています。

そんな感じで、一つのことを学んだ時に、
1.これはどんな時に使えるか?
2.それでどんなプラスが生まれるのか?
3.具体的な使い方(手順&コツ)は?
をつかむ(つかみきれなければ質問しに行く)ようにすると、学んだことを活用できる度合いが上がります。

神は細部に宿る

「神は細部に宿る」という言葉はよく「細部まで手を抜かない」という意味で使われます。これはこれで「そうだよなあ」と思いますがもう一つ「神は細部に宿る」と思うことがあります。それは柱となる考え方を「細部に埋め込んでこそ、目指していることが実現する」ということです。

今週のBL1(論理思考とリーダーシップ)もそんなことを意識しながら授業を設計しました。「柱になる考え方」は、
・学生達が考えまくるようにする(考えるクラスなので)
・論理思考の効用を実感できるようにする
ことです。

例えば授業の最初の方にはこんなスライドが表示されました。

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このスライドは一見、成績評価について説明しているだけに見えますが、実はもう一つやっていることがあります。一石二鳥を狙っているわけです。一鳥は成績評価方法を改めて説明することで受講生のやる気を高めることです。「甘くない!」ということで「もっとまじめにやらないとやばいかも!}と思わせる面もあれば「クラスメートの学びに貢献してこそ成績優秀者になれる」ということで積極的に他の学生をサポートするようになるというように。

もう一鳥は、BL1で論理思考の主要素としている「メカニズム思考」や「目的を押さえた意思決定」が、成績評価という身近なところで実際に行われていると感じてもらうことです。論理思考を教えることの難しさは「自分には関係ない難しいもの」と思われがちなことです。しかしそれでは学習意欲も上がらないので、「身近なものなんだ」「自分にも十分理解できるし使える」と感じてもらうことを重視しています。

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上のスライドでは、単にグループワークのやり方を説明するだけでなく「なぜそうしているのか?」を受講生たちに考えさせています。こうすることで、
・なんとなくワークをやってしまうことを避ける
・常に目的を意識して物事に取り組む癖を付ける
・目的に合わせて細かい手をいろいろ打てることを実感させる
ことを狙っています。
なお、メインとサブという役割を作ってローテーションするようにした理由は、何も言わないとメインの学生はいつもメイン、サブの学生はいつもサブになってしまいがちだからです。どの学生にも「まず自分が口火を切り、一通り意見を言う」「人が言ったことを受けて話す」ことをやって欲しいと考えました。

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上のスライドは、また別のパターンで考えさせようとしています。通常だと「こういうことをフィードバックして」とスライドにあるのですが、ここでは「何をチェックするべきか自分たちで考えて」とあります。こうしているのには、二つの意図があります。一つは「行動目標というのはどうなっているべきか?」を自分たちで考えさせることです。ここで考えると同時に考えながらフィードバックをすることがその狙いで、つまりはとにかく考えさせるということですね。
もう一つは、考えることで「ここにもメカニズムがあった!」と気づいてもらうことです。例えば行動目標というのは成果目標を実現するように作られているとか、同時に必要な能力を強化するように作るべきだといったことです。これをレクチャーで話すことは簡単ですが、それでこちらは伝えた気になっていても、学生は右から左に聞き流している、となりがちです。またちゃんと聞いていてもすぐ忘れます。それを自分たちで見つけることで、多少時間がかかっても「メカニズム思考とはこういうことなんだ」というのが彼らの中にしっかり形づくられていくことを狙っています。

最後に紹介するものは「考えさせる」というより今期のテーマである「たくましくする」ためのものです。

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これは今回の課題の提出方法で、zipファイルにするように、としています。しかしzipファイルの作り方は書いていません。自分で調べるか、分からなかったら人に聞こうと授業で話しています。その狙いは受講生にたくましくなってもらうこと。ITを使いこなすこともそうですし、全て用意されていなくとも自分で調べたり人に聞いてしまうたくましさを身につけよう、ということです。

ここに紹介したのはごく一部で90分の授業、40枚のスライドの中に、たくさんの考える機会と論理思考を実感する機会を仕込みます。それは、この授業を活きたものにする、神を細部に宿らせることだ、と思っています。

場のエネルギーを高めるような目標設定(個人)

秋学期の授業も4週目に入って、今は目標設定にみんな取り組んでいます。

ここで良い目標設定ができると、絶大な効果があります。

できれば避けたい難題が、まるで新しいゲームのように見えたり。延々と続く単調なトレーニングが、理想のボディ実現への階段に見えたり。そうなると学生の学ぶ姿勢も前向き、主体的になってきます。
というように、良い目標を設定できれば、三分の一は終わったようなものです。(あとの三分の二は、作戦を立てることと、実行です)

ところがここで問題は、まだそういった良い目標で成功した経験の少ない人の場合、うまく目標が立てられないということです。
別に努力をしなくともやれそうなことを目標にしてみたり、逆にただ「できたらいいなあ」と無理な目標にしてみたり、「とりあえず片付けなきゃ」と、ありがちだが本人らしさのかけらもない目標を立ててみたり。

そういう状況から、良い目標が立つようにして行くためには、いろいろなコツとともに、どうしても「気持ち」が必要になります。「いい目標を立てるぞ!」という気持ちです。その気持ちを高めるためにやったことの中から、今回は二つ紹介してみます。

一つはSAや教員が自らの経験から、目標設定の意義を語ること。
自分は○○時代にこういうことをやっていた。
目標のない時は、〜〜〜だった。
それがこういう目標を立てたら、意識がこう変わってきた。
そしてこんな結果が出て、こんなふうに力も伸びた。
こんなふうにみんなと喜んだ。
というように。例えばうちのクラスのSAは次のように話してくれました。

自分は高校時代にバスケをやっていた(高校から)。
目標を立てる前は、自分がうまくなることだけを考えていた。弱小チームだったし。
でも、最後の大会を前にして「とにかく1回戦勝とう」という目標を立てた。そして自分が何をできるか考えたら、高校から始めたやつらの気持ちやどこでつまづくかが分かることだと思った。そこで、その指導に力を入れた。
そうしたら1回戦、勝てた。チームの雰囲気もすごく良くなってきた。その後、負けてしまったけれども、みんなですごく喜んだ。

もう一つは、同じ科目を教えている宇田武文先生が、前職の企業でやっていたと教わった話です。それを参考に、次のようなメッセージをクラスのSNSに上げました。

【目標設定は、達成して「お祝い」をするためにあるんだよ】

「目標は、達成したら嬉しくてお祝いしたくなるものにしよう。友達とご飯に行くとか、自分にプレゼントするとか。

目標がないとお祝いもないし、今のままでもできる目標は、達成してもお祝いしたくなるほど嬉しくないよね。
そして、目標を定量化・具体化すると、達成できたらはっきりわかるし、何に向かって頑張ればよいのかもわかる。

「良い目標」を設定できると、大学生活に「お祝い」したくなるエキサイティングな時間が増えるよ。そうなるような目標を設定しよう! そして達成して、みんなでお祝いしよう!

人は一見「メリット」の方が動きそうですし、実際にそうかもしれません。しかしこういう「楽しげ」な感じに持っていくと、単にみんなが挑戦し出すだけでなく、場の雰囲気が明るくなってきます。

そんなことをやった結果、だいぶ、過去のクラスにおけるよりも熱のこもった、その人らしい目標が出て来ました。

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写真は、今日、授業外で開いた相談会の様子。参加は自由なのですが、入れ替わり立ち替わりけっこう学生がやってきました。(写真には女子が多いですが、男子も来ていました)

学びを定着させる振り返りに必要な二つのこと

僕の担当している授業は秋学期の第三週が終わりました。今週のクラスのいずれでも意識していたのは、良い「振り返り」の仕方を伝えることです。「研修や授業、試験が終わったら忘れてしまう」のではない学びには、良い振り返りが不可欠です。

もっとも、それをやったのは授業中ではなく授業後で、クラス用のFacebookグループの中でした。教室内で伝えられることは限られているし、少しずつでも毎日意識していた方が論理思考にしてもリーダーシップについても身につくので、SNSは強力なツールです。

で、良い振り返りの第一のポイント、それは学んだことを「実際どう使うのか?」と考えることです。例えば「実践で学ぶ論理思考」(BL3C)のクラスでは今週、ディスカッションの仕方を学びました。すると「次はどうディスカッションの仕方を変えるのか」(授業に限らずあらゆる機会で)を整理しておくのが、最良の振り返りです。

しかしここで「真の学び方」をできる人とそうでない人の差が大きく出ます。できる人は「具体的に何をするのか」のイメージを頭の中に定着させようとします。そうでない人は授業の中で出て来た「言葉」だけを「今日はこれを学びました」と上げます。「ゴールを共有することの難しさと重要性を学びました」とか。言葉だけ、それもばくっとしたことだけ覚えても、実際には使えません。

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具体的にそれをどうやってやるのか、最低限「普通はこうするけど、そこでこれを意識する」といった具体的な指針に落とし込むことが必要です。例えば「全員がそれぞれの考えを順番に言いがちですが、それだと時間の無駄なので、各自A4の紙1枚に大きく整理して出し合い、共通点と相違点を見つけて、なぜ違うのかを話し合います」とか。

でも、十分なイメージが持てていないと分かった時、二つ目のポイントの出番です。それは「ここが分からない」と質問することです。例えば「論理思考とリーダーシップ」(1年生必修クラス)のある受講生はその点でとても良い例を示してくれました。

「中学生に分かる言葉で表現しよう」と授業の中で出て来たことについて「どのように咀嚼すればその分かりやすく伝わる言葉をうまく見つけられるかが気になります。…これって鍛錬あるのみ?」と聞いてきました。そして僕の答えに対してさらに自分なりにそれを咀嚼し、自分の言葉にして「これで行けますか?」と聞いてきました。こういう人は伸びます。

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これが出来るためには、最初のポイントである「実際どう使うのか?」を考えながら授業を受けていることがすごく効きます。

発想を転換した2016年度BL1スタート

いよいよ今週から、今年度のBL1(論理思考とリーダーシップ)がスタートしました。12クラス360余名の経営学部1年生が、論理思考を使ったリーダーシップの強化に臨みます。
今年は近年では一番教材を改変しない予定なのですが、実は質的には近年で一番変化することになるかもしれません。
論理思考を「教える」というより、自ら学び取っていく「力をつける」授業にしたいと思っています。それを表す今年のキャッチフレーズが「たくましくなるBL1」です。
そんな授業の第1回、まずは「何がうれしくてリーダーシップなんて発揮するの?」(必修だからやってます、じゃリーダーシップっぽくも論理思考っぽくもないよね)と考えました。
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続いて論理思考の話に入るものの、ここでもレクチャーはほとんどなく「とりあえずやってみよう〜!」と演習。ちょこっとだけ整理した後、「じゃあ、これがあったら前期のプロジェクトがどう変わったか考えてみよう」とまたグループワーク。去年までに比べると説明がぐっと少なく、その説明をするのも受講生たちで考えてからにしています。
説明をあえて減らしているのは、「教わって理解するのではなく、少しのヒントから自分で考えてつかんで行ける力をつけよう」「よく分からなくても進んでいける体質になろう」といった意図から。学びのメカニズムをこれまでと違ったものにしようとしています。
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最後の課題はいつもと同じ「クラスの成果を最大化する自己紹介を考えよう」。取り組み方のヒントを出して、本格的には宿題になりました。この週末には、「自分ならではのお持ち寄り」的自己紹介が、各クラスのSNSに上がるはずです。
そして宿題はもう一つ。1学年上のPBL型クラスBL2の決勝進出班の提案内容を分析して、「何が良いのか」をレポートするというもの。これも「論理思考がどう使えそうか」「リーダーシップとどう関係あるのか」自力でちょっとずつつかんで行く」ための材料です。
霧の向こうに新しい世界がある、それを少しずつ自分で晴らしていくような授業にして行きたいと思っているのですが、こちらにとっても少し発想の転換が必要です。我々自身が、たくましくなる必要があります。

リーダーって強い奴しかなれないと思ってない?

立教経営で「リーダーシップ三要素」と言っている中に「同僚支援」というのがあります。同僚がうまく動けるように支援するということですが、その中には、同僚の支援を「求める」のも含まれると最近自分では考えています。

実際、リーダーの中には、頼み上手な人たちがたくさんいます。「おまえに頼まれたら断れない」とか「そういうことなら任せてください」という感じになって、その結果、一人ではとてもできない大きなことを実現します。独力では打開できなかった状況も乗り越えたり。

逆に、プレイヤーとして優れていてもマネジャーになった時に苦戦する人は、自分で全部やろうとしてパンクしたり、うまくできなかったりします。プライドが邪魔をして人に頼めない人も、自分の限界がプロジェクトの限界になってしまいます。

つまり、支援を求められる(助けて!と言える)というのは重要なリーダーシップです。そして強くなくともリーダーシップは発揮出来るしリーダーにもなれる、とも言えます。おもしろいのは、そうやって助けるところがあると、みんながやりがいを感じ、がんばってくれるということです。

「頼む・頼る」ことがリーダーシップと言えるのは、集団のために取り組んでいることについて支援を求める時です。自分のことについて「どうしよう!」と言っていると誰かが助けてくれる、というのは才能/人徳ですが、リーダーシップではありません。でも、その才能を集団のために使えば、かなり強力なリーダーシップを発揮出来るかも知れません。^^

考えずに覚えてはいけない

長男(小3)の勉強を見ていたら、

「1つのもの(こと)の変化を表すときには、上のような(     )で表すとよくわかります。」

という問題が出て来ました。答えは「折れ線グラフ」で、彼は解答例と同じ答えを選んでいました。重要なのは「棒グラフ」ではなくて「折れ線グラフ」だというところのようです。そこで「なんで折れ線グラフだとよくわかるんだろう?」と聞いたら、「タブレット先生がなんだか説明していた気がするけど忘れた」と返ってきました。

うーん…「忘れた」か…自分では考えたのかな? と心の中でうなって、彼に話しました。「そんなことは忘れてしまって全然いいんだよ。というか、覚えようとしちゃいけない。覚えたって意味がない。考えて「そうだな」と思えるかどうかが重要。自分で考えるんだよ。「わかりやすいって、どうしてわかりやすいんだ?」って。

そして、一緒に考えて、「線がつながっているから、上がっているとか下がっているとかいう変化が分かりやすいということかな?」となりました。これは彼と僕で立てた仮説で、覚えた「正解」ではありません。

彼の勉強を僕が見ている意義は、この「なんで?攻撃」を仕掛けることと、考えもせずに「覚える」なんて勉強の仕方を身につけさせないところにありそうです。

目標設定面談はこれだけおいしい

秋から始まるBL1の準備として今、SAたちと目標設定の面談をやっています。1回3、4人ずつを計3、40分で面談するので計3、4時間かかり、しかもこれを5ヶ月間に3回やるのですが、この効果は大きいと思っています。

まずこちらの期待を伝えることによる効果。彼らの目が輝いてくるのが感じられます。やはり人は期待されるとがんばりたくなるのでしょうね。例えば「熱を伝える」のが得意(だが自分ではあまり気がついていない)SAに対して、それをぜひやって欲しい、と伝えました。数人のグループでは十分できている一方、クラス全体を相手にすると最初はかなり緊張してしまいそう。でも、うれしそうに「やってみます!」と言っていました。

二つ目は、彼ら自身が事前に出している志望理由書や目標設定シートで書いていた「目指すこと」「やりたいこと」や「強み」などを反映して行くことによる効果です。例えばあるSAは「受講生全員が質の高い課題を期限内に出す」ことを目標に設定していました。彼女自身がそういう人でその効果を感じているので、みんなにもそうして欲しいと思ったわけです。

これはもちろんやってもらおうと思ったのですが、同時に彼女が志望理由書に書いていた「フィードバックをうまくなりたい」という自分の成長目標も果たして欲しいと思いました。そこで、この二つを同時に達成することを目標にしようと話しました。つまり、自分とは違う相手のことをよく観察して、どうすれば目指す方向に動けるようになるか、つかんだ上で策を取ってみようと。

三つ目は、目標を達成すればSA本人の成長があるように設定することによる効果です。例えば「目立ちたがりだけどそれを押さえてみんなが活躍できる余地を作りたい」としていたSAには「プレイヤーとしてだけでなく仕掛け人として目立つことを目指して行こう」と話しました。周りを活かすリーダーシップですね。これを彼ができるようになったら、さらに大きなことができるようになります。

このような点でうまく行えると目標設定面談は、
・SAたちとの間に信頼関係を築く
・組織のゴールにSAたちの舵をセット、エンジンに点火する
・SAたちの成長につながる
という効果があります。さらに言えば、後で何かうまく行かない時にも、目標設定に立ち戻って話をすると、スムーズにやれます。時間をかけてもやらない手はない、と思います。そしてSAと書いてあるところを部下と置き換えると、これらは企業でも当てはまります。

Work Room